会社売却の価格算定の時によく出てくる単語「EBITDA」とはなんだ?ってのを調べてみた

これはなに

M&A領域で最近エンジニアとして働いているのですが、社内の会議とかに聞き耳を立てていると、会社の売却価格の文脈で「EBITDA」という単語がよく出現します。よく分からないこの略語はなんなのか?というのを素人なりに調べてみた記録です。

言葉の定義と理解

EBITDA は Earnings before interest, tax, depreciation and amortization の頭文字をとったやつ。。 単語に日本語訳つけるとこんな感じ。Earnings(利益) before interest(金利), tax(税金), depreciation(有形固定資産の減価償却) and amortization(無形固定資産の減価償却)。言葉の定義からすると、金利とか税金、減価償却費とか引いていない利益。

そもそもよく使われるなんとか利益の主なやつは以下のざっくり理解。損益計算書の上から現れる順。

  • 売上総利益 => 売り上げから売上原価(商品全体の仕入れ値というよりも、実際に売れた商品の仕入れ値)引いたやつ
  • 営業利益 => 売上総利益から販管費(人件費とか、オフィス代とか)引いたやつ
  • 経常利益 => 営業利益から利息とか(経常的に入るけど企業商売で儲けたものじゃないやつ)引いたやつ
  • 税引き前純利益 => 経常利益から不動産売買収入(経常”ではない”たまにしか発生しないやつ)とかを引いたもの
  • 純利益 => 税金引いた後の最後の利益

減価償却費はどこに入るのか? という話ですが、ググった感じだと以下のような説明でした

減価償却費は損益計算書のどこにある?売上原価に含まれる減価償却費とは? | ストーリーとアートでみがく会計力

減価償却費の中でも、商品の製造に関わるものは売上原価に含まれます。たとえば、商品を作っている工場や機械の減価償却費です。 一方、本社ビルや店舗の建物、その中の設備の減価償却費は、販売費及び一般管理費に含まれます。

とのことなので、営業利益を計算した時にはもう入ってしまってます。 EBITDA は「金利とか税金、減価償却費とか引いていない利益」なので、営業利益に対して減価償却費を足し合わせたものになりそうです。

なぜEBITDAが使われる?

会社の営業マンに聞いたところ、以下のような話

PLに書かれている営業利益や経常利益は、書面上の数字で、実際に会社に出入りしたお金の数字とは異なるんですよね。
減価償却は、費用として計上されますが、実際にお金が減ったわけではない。
「じゃあ、実際に今年、会社から出たり入ったりしたお金はいくらで、現金をどれだけ生み出せたの?」というのを見せるのがキャッシュフロー。
M&Aでは、買い手は、買収対象企業の「キャッシュを生む能力」を見るため、キャッシュフローがvaluationで見られるのです。

会社を買いたい売りたいという時には、「実際どれくらい今後儲かるの?特にキャッシュで。」というのが大切なので、減価償却の分を抜くのが一般的みたいです。

後、ネットでいろいろ調べていると以下のような意見もありました(メモだけ残っていたので出典なし。見つけたら書きます)。

  • 減価償却費とか税金、利息などは国やによりルールが違うので、それを勘定に入れないキャッシュ利益を簡易的に見積もる方法。国際的企業が売り手企業が本業でCFをどれくらい生み出すか、という視点で見たいMA領域でよく使われる。

じゃあ売却時にどれくらいの価格でってのはどう関わってくる?

”「1秒!」で財務諸表を読む方法[実践編] ” という本曰く、要約すると以下のような感じでした

  • 買収時のEBITDA倍率は5倍は不況時または安く買いたい、7-8倍はちょっと高め、10倍は割高で二の足を踏む企業が多い

というわけで、生み出すキャッシュフローをベースに、お値段を決めるのがよくあるようでした。この倍数は「マルチプル」と呼ばれるものらしいです。

相場観って教科書通りなん?

しかし、ここまでだとそこまで納得感はなく、やっている商売によってキャッシュを長く生み出すかどうかは変わってくるはずなので、マルチプルが高くなったり低くなったりするのでは?という疑問がありました。 最近「ゴディバ」の日本事業が買収されたという話がありました。そこでマルチプルの話。(15x というのはマルチプルで15倍、つまりEBITDAの15倍の値段がついた、という理解)

弊社内でメディアの売却の話などをよく聞くが、新興メディアだと5倍もあれば良い方と聞きます。一般的には3倍程度。安定性が低いと2倍とか。 どっかの買い手企業はメディアはマルチプル7倍以下じゃないと買わないよという話を漏れ聞きました。なるほど。

その対比で見えてくるのは

  • 老舗ブランドの場合には継続性が高い(ずっとキャッシュを生み出してくれる)と見なされるので、マルチプル高くなり
  • 新興メディアは継続性に疑問。マルチプルは低くなる

ということのよう。

IPOするときの相場とM&Aするときの相場って違うって聞くけど?

これも弊社内で仲介やっている人がslackに書いていたのを引用します

IPOをする際は市場で値段がいくらつくかを考えるので、実際に類似会社が市場でついている値段を参考にします(=マルチプル法)。DCFは事業計画ありきの価値評価、つまり会社を運営する人にとっての価値ともみなせるので、参考として使う分にはいいと思いますが、DCFの評価をロジックとしてIPO価格を決めるというのは聞いたことがないです。
M&AというイグジットをするならDCFで評価をするのが妥当。

なるほど? EBITDAをベースにしたマルチプル法はわかりやすいけども、M&A実務の実態としてはDCF法のほうもちゃんと理解をして相場観提示が必要そうでした。まだよく学んでないのでこちらも近い機会に学んでいきたいと思います。